​「森の座」

今月の推薦句(「花樹の道」より)

♦令和2年2月号の推薦句

雪蛍人を疑ふ気力失す         篠田  暘 

風の子のでんでん太鼓吾亦紅      宮坂 恵子 

冬ざれやこの国の根太腐つてる     五十 青史 

千切れてはまた集ふ雲千空忌      家登みろく 

猫じやらしかたまり枯れて漁師町    小村 一幸 

熟れてゆく時間を過ごす野の柿と    渡辺多佳子 

秋茄子や丸く小さく寂聴さん      藤本トシ子 

陽を反す錻力煙突石蕗の花       松本千代美 

四車線停めて渡るや秋高し       柳澤 和宏 

賓頭盧の心地顔かな小鳥来る      清水 雪江 

白鳥の三声千空忌を修す        木村  茜 

出立を急かす秒針朝の鵙        森  巫女 

不知火の海にぎらりと太刀を釣る    木村 保夫 

冬あたたか崎にしくりと千空碑     大川 恵子 

朱をつくし自我をつくして山帰来    藤田 明子 

並足に揺らす黒髪小六月        栗原 実季 

なかごまで柿は柿色子を信ず      小泉 光子 

観音の捌く千の掌秋澄めり       小野 昌子 

冬近し瑠璃を封じし小灰蝶       杉本喜和子 

役ひとつ退き立冬の靴みがく      末次 菖夫 

あちこちに現はるる富士小春かな    平尾 潮音 

半世紀飢ゑなき暮らし大嘗祭      榊原 淑友 

冬薔薇師系の句集に糺さるる      藤田智恵子 

水洟や無頼派の碑は軒下に       木村 郁代 

鵙一声校正いそしも一文字づつ     権藤 順子 

どんぐりに打たれ優柔不断かな     角田 貴彗 

脱北の冬蠅まどろむレストラン     笠原十九司 

露草にこぼるる花のなかりけり     吉田健一郎 

わつしよいの声を遠くに藁ぼつち    木村 郁代 

こんこんとノックしてより林檎食ぶ   橋原 涼香 

♦令和2年1月号の推薦句

電線は空のサーカス蚊喰鳥       沼田真知栖 

忙しなく移る猫の座秋日和       柳澤 和宏 

馬の眼の光恋しと残る蠅        家登みろく 

試歩の夫野の秋雲に預けおく      髙木 喜代 

いぢわるがくつついてくる草蝨     石田 福子 

笑栗や総身波打ち栗鼠過ぎる      加藤  仁 

蒲の穂を飛び立つ絮の不思議かな    湯谷 和枝 

白雲は地球の帽子花野行く       村田  惠 

先頭はあかんぼいるか秋の波      満瀬 哲子 

馬柵に添ひ馬柵に護られ吾亦紅     岩井 秋津 

碧眼の露天商をり日蓮忌        山川 漠千 

ごろた立てやれば墓石曼珠沙華     宮坂 恵子 

露草で染めた喪服を着てください    渡辺多佳子 

杖ねかせ花野の中に溺るるや      木村せい子 

亡き母の再婚話遠き秋         三上悠恵子 

供養碑を火攻めにしないで曼珠沙華   花岡  紅 

水を出て河馬の全身秋日垂る      平井 靜代 

蔓引けばここぞの力枯葎        田辺ゆかり 

赤い羽根右胸高く貰ひけり       二宮 豊泉 

夏暁やペテルギウスを機窓より     内田 和子 

獅子頭に吹き込む命里祭        多田 敏弘 

被災地へ画面の移るつづれさせ     徳田 文三 

名月と四国三郎渡りけり        木村 保夫 

秋の蝶忽とひかりに紛れけり      大川 恵子 

草雲雀と思ひたいからさう思ふ     平尾 潮音 

赤い羽根つけられて今胸を張る     岡本 幸子 

桜紅葉はさんで今日の日記閉づ     橋原 涼香 

夕虹や我が身に遺る相聞歌       竹内 伸子 

秋鱧の湯引きや夫の食戻る       松村 静江 

母の忌の一日迅し栗ご飯        宮田 聖善 

♦令和元年11月号の推薦句

傷の雨降るよ納涼映画祭        田辺ゆかり 

赤ん坊の手足奔放雲の峰        宮本紀久代 

われ走る月走る犬遠吠えす       五十 青史 

膝の上にたたむ残暑の濯ぎもの     安達とよ子 

招いては宥め押しやる盆をどり     大川 恵子 

父親の息を吹き込む浮袋        多田 敏弘 

雨の中電柱に鳴く烏の子        大木 黄秀 

つくつくしひとり大工のまだ励む    佐藤 和子 

帰省子の靴に重さのありにけり     篠田  暘 

甘酒を冷やして母をなつかしむ     田中 玲子 

叢雲の月を離るる夜明け前       小泉 三雄 

風鈴屋七つの音色聴き分くる      市川 良治 

絵葉書を施設気付に夏見舞      佐々木あや子 

骨拾ふ箸を造ると谷卯木        甲斐 酒巷 

氷一片口に炎暑の街に出る       木村 保夫 

盆灯籠無声映画の廻り出す       古谷 誠司 

山の風いただき母の墓洗ふ       片山 丹波 

岩松の鉢を戸ごとに滝近し       栗原 実季 

秋暑し今は戦前かも知れぬ       平尾 潮音 

霹靂神墨書一気に委嘱状        権藤 順子 

ひまはりの空ぞよ軍事ヘリコプター   石田 福子 

夏燕ぷつぷつ熱きドリア来る      篠原 久子 

遠雷や自転車の子の今どこに      荒井 章有 

ちとずれし老女一人の秋すだれ     川滝 道子 

小さき蕃茄割れ青空に雲ひとつ     松本千代美 

今朝秋やたかだかと盛る御仏飯     登川 笑子 

よその子の願ひの糸もよく回る     橋間  涼 

大輪の音の追ふなり遠花火       柳沢 治幸 

叔母を訪ふポンポンダリア束にして   増田 順子 

沖縄は今も捨て石梯梧咲く       吉田 遼吉 

♦令和元年10月号の推薦句

婆の畑お手玉遊びの紋白蝶       加藤  仁 

しののめの玻璃も開けねば薔薇の息   渡辺多佳子 

更衣傘寿をさらに美しく        松本三美子 

シーツの蟻潰すあんた咬むやんか    青木 宣子 

遊び足りてさよなら夏至の陽が落つる  宮下 初子  

早苗饗の飯輝やかに炊き上る      柴﨑 泚子 

己が影摑まへ歩む羽抜鶏        大川 恵子 

けいどろの一人捕まる夏野原      松本千代美 

油蝉母の小言の降りしきる       藤田 明子 

スカイツリー穂より目覚めて明易し   岩井 秋津 

祇園路地日傘傾け行き交へる      宮本紀久代 

田植機を洗ふ令和の縄文人       森田千枝子 

汗かいて人に褒められようと思う    田端 千鼓 

梅雨葵赤子足から泣き出しぬ      小西 弘子 

逢うへるかと行きつ戻りつ祭の夜    中尾 教子 

牛蛙ぼうぼう腹から怒る夜       笠原十九司 

錆ぶることつひに知らざり水中花    谷  就応 

義姉よりの玉手箱なり夏野菜      福本美智子 

をとこしの水打つ宵の先斗町      田辺ゆかり 

星まつり小指に軽き後遺症       斉藤はじめ 

尾を鉾と猫らも祇園祭かな       家登みろく 

飽食の残りしづかに蟻集る       小林 迪子 

人も時もゆつくり過ぎてさもも畑    栗原 実季 

夕涼や使ひ余せる如露の水       篠田  暘 

アポロ立つより半世紀月涼し      水田雪中花 

詰襟の清き一票夏燕          袋田 龍睛 

旅にゆくやうに緑蔭出でにけり     吉田健一郎 

さかさまの守宮に心覗かれし      権藤 順子 

黒蒟蒻千切りて煮しめ男梅雨      篠原 久子 

見えますか仏間に螢放ちます      木下 早苗 

 

♦令和元年9月号の推薦句

草はみな母に平伏す大夏野       渡辺多佳子 

祖母の濃さ母の薄さか蕗を煮る     間宮  操 

木蓮と木喰仏を見に行かな       竹内 伸子 

新しき靴もて薄暑光の中        家登みろく 

看取り終へて腑抜けの母や水羊羹    木村 郁代 

母の日や堂々ご飯おかはりす      石田 福子 

一斉を待てぬ風船児が放つ       大村 生雲 

竹の葉の散るちるうす日あそばせて   安達とよ子 

夏燕島の学校頂上に          北山 恭子 

枇杷買うて母の忌近き仏壇へ      岩井 秋津 

西日中影に後れて歩きをり       田端 千鼓 

一片の雲のささやく田草取り      萱原 祥暢 

看護師の甲はメモ帳風信子       川﨑 圭司 

駅前にサーカスが来た夏が来た     平尾 潮音 

海に立ち裾太々と春の虹        沼田真知栖 

日の内に届く速達夏燕         上本 白水 

太宰忌や姉弟可も無く詩に遊ぶ     柳沢 治幸 

サイダーの泡刻刻と大胆に       木村  茜 

群衆に屈み背見せて祭笛        柳澤 和宏 

水の輪のいつも真ん中あめんぼう    田辺ゆかり 

吾病むや夫もろきこと青葉雨      大島 良子 

どこからも見える学校青田原      笠原十九司 

ほうたるか迷えるままの兄か逢ふ    水田雪中花 

生きて在ることの嬉しさ新茶汲む    寺門 資子 

竹の子やすでに疵増えランドセル    篠田  暘 

南海トラフ端つこ揺らす金魚玉     西野智壽子 

畑に聞く六時のチャイム明易し     成田 圭子 

贖罪とやどこまで続く蟻の列      中村なづな 

大青田たわみわたれる送電線      大木 黄秀 

来ん夜の夢食べに来たかや時鳥     田谷 公夫 

♦令和元年8月号の推薦句

流木は真昼の白さ入彼岸        沼田真知栖 

甘茶仏注がれ美男の眼鼻だち      橋間  涼 

洗濯機の重たき唸り暮春かな      古谷 誠司 

話したく春のねぎの香抱へ来る     筒井真由美 

雀等の仏飯にくる子供の日       笹近 逸美 

五十年拭き込みし縁花仰ぐ        佐々木あや子 

巣に籠る雲雀両羽広げ切り       西村 綾子 

絹ざやを摘んで爪先真緑に       大木 黄秀 

たかんなの少し傾ぐへ鍬一打      柴﨑 沘子 

はくれんの錆び散るままに選挙果つ   杉浦ふみ彦 

大いなる母の忌日の春の虹       寺門 資子 

母の手のいつも濡れゐし豆ご飯     田辺ゆかり 

新元号で巡る七曜風薫る        木村 郁代 

北見れば眼冷えゆく鳥曇        渡辺多佳子 

時折は独りがよくて青葉木菟      栗原 実季 

暮れてなほ青き闇ある皐月かな     大野 和代 

ゆつくりとしかもゆつたり春の川    西村 祥風 

たんぽぽの絮坊風の齧りかけ      宮坂 恵子 

焙らるる蛤くくと笑みはじむ      小林 迪子 

青葦のひやりと水に触れしごと     小西 弘子 

穀象も炊くなり我は信濃の子      橋原 涼香 

畦塗や旭集まる鍬の先         多田 敏弘 

にはたづみありしかたちに花の塵    吉田健一郎 

丸腰の命がひとつ耕せり        角田 貴彗 

蝌蚪生まれまだよろこびのほかしらず  平井 靜代 

老楽し花咲くゆゑに散るゆゑに     小島 露峰 

豆御飯炊いて令和のお朔        濱名 カヨ 

梵鐘に父の名うすれ涅槃西風      大島 良子 

見送りの母の見てゐる春夕焼      伊藤 亜紀 

持ち帰る水より軽き金魚かな      宮本紀久代 

♦令和元年7月号の推薦句

また老の空騒ぎかな春一番       森﨑美保子 

いつの間に遅るる時計春落葉      杉本喜和子 

陳列の雛よひなの日の暮るる      大山 洋子 

天指せる指先にまづ甘茶かな      松尾 美咲 

まなうらに母生きてゐる水草生ふ    片倉 フミ 

陽の光束ねて揺れて水温む       佐々木章子 

ゆつくりと土を噛む鍬揚雲雀      栗原 実季 

賢くて美しく老ゆ梅月夜        木村 郁代 

面影をとうに忘るる花ぐもり      笹近 逸美 

紙すべて雛に折りて亡き娘偲ぶ     山本 道子 

初蝶や黒土の息立ち上る        伊藤 亜紀 

胸に抱くものに赤子と囀りと      田辺ゆかり 

やはらかき唇の頃草の笛        木村 保夫 

水桶に荒砥中砥や囀れり        成田 圭子 

くろがねの鍬をつくして春耕す     髙𣘺 敏夫 

新しき道や背筋や朝桜         権藤 順子 

蹴り上げて三点倒立風光る       橋原 涼香 

一日を煮つむるごとく耕せり      家登みろく 

目が合へばすくと四肢張る春の鹿    角田 貴彗 

捩れ立つかひづかいぶき仏生会     渡辺 厚子 

黒牛の泪は黒し養花天         木村  茜 

陽の匂ふ髪解き放ち花疲れ       木村 郁代 

花曇さびれ床屋の蒸しタオル      杉浦ふみ彦 

日向ぼこ新聞読む目えんまの相     加藤  仁 

紙風船受けて返して仲直り       小野 昌子 

渦潮の渦へ落ちゆく連写音       木村せい子 

風なき野焼きていつしか風を呼ぶ    村松 千鶴 

初蝶やあの世の沙汰をつと告げに    濵名 カヨ 

手に包む地蔵の壺や桃の花       多田 敏弘 

未だ来ぬ神の一言万愚節        五十 青史 

 

 

 

♦令和元年6月号の推薦句 

薄明のすがた遠くも野梅の香      久保下和凡 

うつ伏せに又ねむりをり春炬燵     末廣 隆子 

毛氈の今朝の埃や雛の部屋       糸山 栄子 

山に入る妻は弥生の潤み色       藤原 昌仁 

紅梅や鎧光りの瓦屋根         木村 保夫 

桑を解く男結びを一鎌に        橋原 涼香 

のどけしや共に杖つき手をつなぎ    板鼻 弘子 

ジーパンに覗く太もも風光る      篠田  暘 

土砂投入止まり知らず水温む      吉田 遼吉 

灯されてなほ仄暗き内裏雛       岩井 秋津 

石けりも缶けりもせし春の雲      中尾 教子 

母逝くの一行五年日記果つ       大村 生雲 

母に述ぶる華甲の礼や蠟弁花      権藤 順子 

ポケットで鳴る啓蟄のビバルデイ    木下 早苗 

八本の櫂のしづくや瀬田早春      服部 好子 

春や車窓嬥歌筑波はまたニ峰      糟谷 雅枝       

試算表組みて崩して春寒し       安部眞希子 

宙に舞ふお手玉の彩春めきぬ      久野 敬子   

ころころと何処へ隠るる雛あられ    神谷小百合 

夕日さへ焼くかに野火の走りけり    松本三美子 

佩刀の重きに男雛たふれたり      五十 青史 

まんさくや少し残して去る病      柳澤 和宏 

十二階が妻の病室春の城        森岡 青潤 

鉄骨のすくすく育ち木の芽吹く     小林 迪子 

白と黒灰色学び卒業す         小野 昌子 

雛七段ゆるやかに鳴る大時計      小田切倫子 

囀りや少年いよよ無口なる       登川 笑子 

沫消ゆる間なく寄せ来る春の潮     木村  茜 

母子草残し草引くお祥月        青木 宣子 

大空を揺する水面や芹を摘む      松本千代美 

♦令和元年5月号の推薦句 

友の黙へかさぬる黙や夜の雪      橋間  涼 

子育てを了へし二の腕大白菜      西村 綾子 

陽炎を抜けて少女期逝きにけり     渡辺多佳子 

雪しんしん逆さ別れのただ黙(しじま)  大熊 小葉 

一日があつといふ間に梅の花      石田 経治 

蒼空へ送る火の鳥吉書揚        森棟 正美 

梅咲くや面白さうに銭洗ふ       滝沢 静絵 

吊るされて乾鮭縄を咬むごとし      一戸  鈴 

神鈴の馬の口めく鬼やらひ       多田 敏弘 

匂ひ高く詩嚢の深く臥竜梅       栗原 実季 

餅間の雁木に乾くすずめ貝       東谷 信子 

初富士を商店街の屋根の上       竹内 伸子 

「冷たいね」と握手の妻に逢つて来し  横村 楓葉 

ラグビー一笛スクラムを割く風を割く  家登みろく 

ひりひりと干菜鳴る夜は鬼が来る    伊藤 青砂 

日向ぼこ「楽しい事」を箇条書き    荻野 善子 

産土の傾く社黄砂降る         飛田 伸夫 

臨月の牛のざわめき寒昴        橋原 涼香 

昨日今日明日も春の雪重し       船尾 恭子 

薄氷をぱりぱり言はせランドセル    藤田 明子 

並び立つ孫の背丈や初山河       岸本 千絵 

クルーズ船寄港の噂春浅し       渡辺つや子 

浦凪やわわけ下れる干若布       平尾 潮音 

待春や畑に挙れる土竜塚        松本千代美 

留まりて風を窺ふ野焼の火       田辺ゆかり 

白粥に一匹で足る目刺焼く       森田千枝子 

稚の一挙稚の一動福寿草        大島 良子 

わたくしと私老いたり初鏡       西野智壽子 

霜柱泥を捧げつ光(かげ)撥ねつ     竹馬 安芸 

母よりも父よりも生き山笑ふ      穴澤 輝子 

 

♦平成31年4月号の推薦句 

祖父恋し豆殻からから雪に挿す     橋間  涼 

隻眼の達磨攻め立てどんどの火     家登みろく 

ピカチュウもパンダもねむり年の夜   石田 福子 

棘ひかりつつ冬薔薇の褪せゆける    松本千代美 

去年今年言葉の海を徘徊す       登川 笑子 

二子二家へ二つの炬燵温め置く     佐藤 和子 

冬耕の土埃立つ匂ひ立つ        小林  收 

蛇崩れの疵かき抱き山眠る       田辺ゆかり 

寧日や花札ほどの餅焼いて       花岡  紅 

雪降れり空より低きところから     渡辺多佳子 

クリスマス抱き合ふ友の新生児     権藤 順子 

弓手で書く立子の色紙寒桜       栗原 実季 

元日や湿(し)る夕べの旗降ろす     末次 菖夫 

いつの間に殖ゆる綿虫母の忌来     大島 良子 

犬吠ゆる冬三日月のほそりやう     吉田健一郎 

今晩はなどと焚火へ入りけり      小西 弘子 

専一といふべし寒の紅椿        村田  惠 

初夢は娯しかりけり黙すべし      五十 青史 

御降りの雪に包まれ母を訪ふ      木村 郁代 

飄飄と刈田の風や小弔ひ        竹内 伸子 

父の忌の降る雪墓も山も消す      角田 貴彗 

冬かもめ降り立てばつい数へをり    平尾 潮音 

人日や千代結びとふ有平糖       宮下 初子 

伊勢海老に万歳させて網脱がす     斎藤 嘉七 

舌頭に寒の土筆をあそばせて      森  巫女 

吹雪く夜は北の大地の獣医酔ふ     澤田冨士夫 

男の靴似たり寄つたり年忘れ      森田千枝子 

人日やこれより吾が杖となる      髙橋 信子 

全身で扉を押しぬ初礼拝        服部 好子 

笑顔なら老にまかせよ竜の玉      川滝 道子 

♦平成31年3月号の推薦句          

人の上を泳ぐかに行く大熊手      小西 弘子 

まなざしの枯野を来たるしづけさに   平尾 潮音 

完存の宝篋印塔冬紅葉         内田 和子 

電飾の虚飾七色十二月         木村  茜 

初氷朝日子集め子を集め        加藤  仁 

綿虫や妣にこつそり会ひにゆく     髙木 喜代 

年の夜のエプロン羽化のごとく脱ぐ   小林 迪子 

白菜は球と結びて母の忌来       安達とよ子 

冬の雷緯糸飛んで遁げてくる      中村なづな 

枯蓮の奥にサッカーボールかな     松尾 美咲 

すれ違ふ人へ身構ふ枯野なか      石田 経治 

満ち欠けを月は休まず十二月      家登みろく 

年惜しむなんとはなしに遠く見て    石田 福子 

明るさはいつも真ん中花八手      沼田真知栖 

さみしくば鈴振つてみよ冬樗      東谷 信子 

しゆんしゆんと鉄瓶たぎる十二月    濱名 カヨ 

愛日の音なき不安砂時計        糟谷 雅枝 

少女らの爪に星描くクリスマス     木村せい子 

待針の数を合はせて十二月       片倉 フミ 

六オンスグラスに挿され冬薔薇     髙野よしこ 

電飾に聖樹縛られゐる真昼       古谷 誠司 

「災」の字のおどろおどろに雪起し   小林  收 

摩天楼抜けて星まで大聖樹       増田 尚子 

鴨来たる着水の身をぶつけ合ひ     下山田 俊 

急くやうに鷸の漁り冬の朝       栗原 実季 

円と三角四角ストレス漱石忌      小野 昌子 

佳きことのひとつがほどの冬の虹    西村 綾子 

シクラメンの紅白先づ置く新校舎    権藤 順子 

ほてりゐる水木の紅に風花す      大川 恵子 

あと何度出来るのだらう雪囲      山内ひろ子 

 

 

​♦平成31年2月号の推薦句

秋雲離々何時でも逢へるホームの妻   横村 楓葉 

鳴門巻きに紅き渦潮冬立てり      間宮  操 

あぶあぶと稚の宇宙語仏手柑      武田 詩子 

妻呼べばコーヒーの出る小六月     小林  收 

もう母の前で泣くまじ赤とんぼ     家登みろく

水鳥の流れて戻る夜の川        小西 弘子

大声に交はす挨拶朝焚火        篠田  暘 

甲斐駒の雲ほどけゆき鷹わたる     笠原十九司 

重心の揺らぐ愉しさ秋桜        渡辺多佳子 

返り花妻と書くこともうなくて     木村せい子 

老いたれば老いにかしづく萩に風    西野智壽子 

間引菜のもう大根の辛みかな      山下 峯一

八卦見の御託身にしむ帰り道      五十 青史

継ぎ足して炭が匂へば父がゐる     宮下 初子

日本の白に新米炊き上がる       坂本由己雄 

肩貸せば薬の匂ひ報恩講        末次 菖夫 

湯上りの少女の耳や秋海棠       木村 保夫 

黒板にお日さまの顔運動会       松本千代美

動くかも知れない朝の鵙の贄      森田千枝子

大石に日のしづかなる枯野かな     平尾 潮音

今日を覚めけふの菊の香寿げり     谷  就応

蓑虫や聞くともなしに聞くはなし    宮本紀久代

新巻の縄固噛みに吊るさるる      伊藤 青砂 

小春空日々は静けく死を纏ふ      𠮷筋 惠治

ぷちぷちと睫切らるる冬浅し      中村なづな

またとなき日和を使ひ冬支度      安達とよ子

透明な音が降るなり松手入       宮田 聖善

雁渡る曳かるる紐のあるやうに     杉本喜和子

すみれ苗フランス国旗の型に植ゑ    権藤 順子

紫苑咲く引戸ばかりの生家なる     木村 郁代 

 

​♦平成31年1月号の推薦句

秋刀魚焼きつ勅語暗記をしたもんだ   横村 楓葉 

手ぶらなる仏在さじ豊の秋       川滝 道子 

主なき家の佛事や小鳥来る       末廣 隆子 

身辺に不思議は溢れ曼珠沙華      濵名 カヨ 

海へ出るほかなき坂や真菰刈      石田 経治 

盆提灯あなたの闇のやはらかく     平尾 潮音 

露繁きこの人も今看取り妻       内田 和子 

あれ飛んだぼうし稲穂の波の上     石田 福子 

褒める人増えお向ひの松手入      山本  剛 

観音の頭にも観音小鳥来る       川﨑 圭司 

群れとんぼ奪ふ神ゐて牧の空      五十嵐翔林 

捨てられし露草露に目覚めけり     吉田健一郎 

運動会の中止連絡駆け巡る       荻野 善子 

帰路癒す夜業の音と漏るる灯と     白石 綾子 

ふところに笛のつつぱり秋祭      東谷 信子 

草の花トロッコ列車に駅五つ      奥 みずき 

秋刀魚焼く夕闇少し後退り       宮田 聖善 

あかときの鴇いろに立つ鷹柱      宮下 初子 

熟柿や妻に呼ばるること遥か      佐久間健治 

一徹に葉を削ぎ落とし曼珠沙華     角田 貴彗 

伝法な南瓜と母が待つてをり      藤田智恵子 

あれはあれわが煙秋のちぎれ雲     中村なづな 

そのなかのひと際猛き鶏頭花      宮本紀久代 

案山子負ふ案山子のやうな祖父も逝き  青木 宣子 

悠々と脂光りの穴惑ひ         坂本由己雄 

下り鮎水の速さに随へり        伊藤 青砂 

チンドンの笛や太鼓や蓮の実飛ぶ    市川 良治 

物差しに弟の名前草の花        村田  惠 

義妹逝く美しくゆく十七夜       森  巫女 

祖母五十年忌も済みて十五夜さん    大石 幸子

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