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2026・5月号 横澤放川選

よんべ搗いたと寒餅販ぐおばあさん     木村せい子

寒の灯に娘の喪衣の仕付け抜く       森  巫女

家継ぎの意気のせ寒餅発送す        安部眞希子

姉癒えよ汝が沈丁の咲き初むる       木村 保夫

園の子に春の足音届くらし         森田千枝子

誇るものなにもなき故郷春星忌       笠原十九司

よき嘘をつける齢や葛湯搔く        木村 郁代

千歳の憂のなんぞ日向ぼこ         青木 宣子

畑隅に居残り一人葱坊主          太田 量子

ひらがなのうぐひすもちの鎮座せり     宮本紀久代

春立つや老いて遊びを怠らず        近藤 育夫

掛柳甲骨文字の馬跳ねて          内田 和子

還暦のお内裏さまのわらべ顔        平尾 潮音

駈けださうときめき坂は雪催ひ       村田  惠

朧夜や古書に隠るる栞紐          古谷 誠司

 

2026・4月号 横澤放川選

 

平然と吊られ裂かるる鱇(かう)真白     髙𣘺 敏夫

結び柳伸びて畳を引き摺りて        津川好日子

たなごころのやうな砂窪寒すずめ      松尾 美咲

杖なしに歩めと一行初日記         山本 綾子

おだやかな六腑とありて初日かな      濵名 カヨ

伸し板にまだやはやはと配餅        幡谷 哲子

雲水の袈裟翻る雪の橋           宮本紀久代

人の肩揉むさまに揺れ枯芒         古谷 誠司

初日記穏やかとのみ記しけり        田端 千鼓

初茜卒寿を染むる曽孫(ひこ)染むる     佐々木あや子

煤竹の花器一輪の寒椿           印南 美都

草間彌生の南瓜と撮す着膨れて       平尾 潮音

鉈で割る冬至南瓜のしたたかさ       佐々木龍雄

鋸山の目立てきつちり初景色        布施 和子

神送りはたきの先の小暗がり        林  訓子

 

2026・3月号 横澤放川選

 

論破せよポインセチアが使嗾する      木村 保夫

花紅葉といふも麗し冬紅葉         津川好日子

念仏のほろほろこぼれ小豆干す       木村 郁代

冬ざくら時ひつそりと過ぐる日の      平山千穂子

冬晴や光吸ふまで鎌を研ぐ         保泉 溪子

鮮やかな胸の白月熊撃たる         大川 恵子

消壺の触れて温みや初時雨         栗原 実季

干蒲団ときに自愛に疲れたり        小林 迪子

着ぶくれて空中ブランコ見上げをり     小原けい子

鯛焼のバリ芳ばしき尾を張れり       齋藤美茄子

仏像のお顔くすぐる煤払ひ         山本 慶子

家々に防犯カメラ暮早し          荻野 善子

句座進むラフランス香を零しつつ      大熊 小葉

いつ消えし蝉の音虫の音母呼ぶ声      青木 宣子

風の日は風の甘さの吊し柿         谷  就応

 

2026・2月号 横澤放川選

立冬や玻璃戸磨けば玻璃鳴る        北杜  駿

馬面の皮ひつぱがす神の留守        木村せい子

秋天を仰ぎ陽気な寡婦たらん        安部眞希子

娘へ孫へ灯れよ大きな木守柿        間宮  操

雪囲ひ掛矢去年より重たくて        山内ひろ子

柿熟るるこんな小島に駐在所        松村 央美

野の幸や飢ゑ知らぬ子とむかご飯      濵名 カヨ

さんさ時雨父の御箱の聞こえしや      島  汀胡

姿なき富士を拝み新松子          岸本 千絵

校長も大工も居りぬ日向ぼこ        古畑  和

新米の香り積み上げ夫の忌来        西村 綾子

朝日子を小さき胸に尉鶲          栗原 実季

砂時計のくびれる時間冬隣         角田 貴彗

荻の葉の折り重なりへ谷戸の風       飾 ゆみ子

十一月暦を泳ぐやうに過ぐ         伊藤 亜紀

2026・1月号 横澤放川選

 

秋の暮鬼に応ふるまあだだよ        藤  大和

刈萱の野をよぎりねば指に傷        林  訓子

弟は疾くに逝きけり雁の棹         登川 笑子

奥能登へ壁なす背高泡立草         大濱美映子

瓢箪のくびれ正しき実りかな        髙橋 信子

友逝けり庭の八千草そのままに       松本千代美

三宝の新たな懐紙秋まつり         斎藤美茄子

独り居のわたくしへ炊くむかご飯      森  巫女

国宝の太刀に刃こぼれ式部の実       西野智壽子

菊日和高座に菰樽後ろ幕          津川好日子

泡をふき水を吸ふ土秋旱          保泉 溪子

早稲の穂や電車まもなく駅に着く      来栖 章子

洗濯物少なき淋しさ秋日和         西脇 純子

極暑共にせしスニーカー捨つる秋      太田 量子

赤や黄や濃きや淡きや紅葉山        鈴木 極光

 

2025・12月号 横澤放川選

 

盆仕度娘の法名をまたなぞる        佐々木章子

月山に座礼するごと草を取る        木村 保夫

絵本のくまさん本当に出てきた       佐野  和

今朝の秋お宮さんまで行つて来る      石田 福子

ちゆうしやようのうでください星祭     紺野 久典

特急の車窓に月がついて来る        太田 量子

宵宮の昭和の灯り見てをりぬ        大川 恵子

百余年慰霊の香煙震災忌          岩井 秋津

高嶺晴麓に競ふコンバイン         島  汀胡

秋茱萸をポケットいつぱい家苞に      武田 詩子

敬老日卒寿になりて人ごとに        北浦 善一

黒焦げの皿の秋刀魚の面構へ        細井  清

澄む月に五岳稜線涅槃かな         関根 和子

烏賊干しの沖つ白波うねりをり       一戸  鈴

八月や抗撃はせぬ団子虫         佐々木あや子

 

2025・11月号 横澤放川選

早苗箱へ水の光の撒かれをり        来栖 章子

自分等はただ一匹の蠅殺す         石田 福子

夜来の雨警報のまま秋に入る        山内ひろ子

決勝の球児に届く氷水           森田千枝子

自転車の空気満タン夏はじめ        福本美智子

うれしさの一の矢二の矢夏つばめ      伊藤 亜紀

墓洗ふ老いたるわれを母知らず       宮本紀久代

盆提灯この家知らぬ父母へ         平尾 潮音

大根蒔く明日が来ようと来るまいと     木村 隆夫

安穏に起き伏すくらしほととぎす      檜山 火山

空調服行き交ふ工場凌霄花         藤井 安廣

普賢岳浮かび沈みて大花火         松尾 美咲

盆棚に座り悪しくも自家野菜        齋藤美茄子

珈琲を丁寧に淹れ魂迎へ          木村 保夫

散らかして叱られないか凌霄花       増田  涼

​2025・10月号  横澤放川選

未央柳風をほどきて活けにけり       平山千穂子

晩夏光御用聞き老ふ我もかも        島  汀胡

麿の眉じみてやさしき袋角         林  訓子

もう君は聴こえてますか草の笛       橋原 涼香

戻り来る姿しなやか親燕          白井 綾子

岩稜のリュック掠むる岩燕         細井  清

蕺菜の花寂びるまで庭に置く        武田 詩子

妹は長男の嫁夏燕             阿部 明美

蚊を打つて無住の家を覚ましけり      平尾 潮音

錆びてなほ泰山木は天恋ふ花        大山 洋子

タラップを上りて機長夏燕         来栖 章子

午前二時のこむら返りや時鳥        齋藤 一子

どかどかと土足のままの子等の夏      大野 和代

六月十一日秞子桃子の忌なりけり      藤井 安廣

備蓄米買ふ列のごと蟻の道         松村 央美

​2025・9月号  横澤放川選

山法師えご莢蒾の白き花          山内ひろ子

草螢手渡し夫はゆきしまま         木村せい子

鯵刺の空の断崖踏み外す          杉浦ふみ彦

声持たぬ蛍よ惜しみなく光る        川村 耕泉

半ズボンのポッケ膨らむ石ばかり      木村由紀子

おだやかな酢漿の花日日ほしむ       大島 良子

好好爺諸肌脱ぎしも佃島          岩井 秋津

ゆやけ雲絵筆拭へる布のやう        森  琴乃

大泣きの吾子あやす鬼節分会        木下 早苗

雛供養せしこと悔ゆる今年かな       鈴木 佐智

曳山はペルシヤの幕や夏の雲        近藤 育夫

まだ口の動く虎魚を籠に売る        阿部 明美

こつそりと早めのランチ山法師       栗原 実季

顔ずぶと烏水飲む薄暑かな         小林 玲子

形代にだけ本当の歳を書く         青木 宣子

2025・8月号 横澤放川選

鱧の皮小鉢のやうに母は生き        藤田智恵子

種蒔きぬ童の蒔きぬ良く育て        一村 晶代

どしやびしやの水輪大小寒き夏       森  巫女

日の丸を風に広げて子供の日        間宮  操

銀舎利を夫に供へる浅き夏         村田  惠

閻魔堂出る顔みんな春惜しむ        伊藤 亜紀

豆咲いてくすくす笑ふ蝶を待つ       青木 宣子

校門を父と叩いて入学す          森田千枝子

母が炊く鉄鍋二升の豆御飯         濵名 カヨ

桐咲くや未だ隠し事なき少女        木村 郁代

かたばみや何事もなく日の過ぎる      関根 和子

一と日臥し一と日の重み夏浅し       大島 良子

母の日や水ひそやかに田へ渡る       大川 恵子

はじき豆赤子の御居処御居処かな      髙野よし子

つばくらめ信用金庫へ泥はこぶ       木村せい子

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